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(承前)

演習についてのブリーフィングを終えて、駐機スペースへと向かうイサムの背中に、メロディが呼びかけた。
イサムさん、これで良いのですか?」
メロディは、あまりにも不公平ではないかと気にしていた。
VF-31の2機編隊は、6機の無人機AIF-10Aが随伴する。機体の基本性能もさることながら、火力の差は歴然としていた。
「ハンデをくれって言いたいのかい?」
イサムは茶目っ気たっぷりにウィンクした。
メロディはイサムの自信たっぷりな様子に一瞬言葉に詰まった後、言い返した。
「そうではなくて……その、こちらが編隊(2機)なら、そちらは小隊(4機)で戦力が互角になるのではありませんか?」
イサムは唇に貼りついた笑いを消さない。
「メロディちゃんが言っただろ? 勝敗は意志の問題だって。そっちの意志が二人なら、こっちも二人にするのが筋ってもンだ」
イサムには意表を衝かれっぱなしだ。メロディは苦笑してしまう。
「ですが…」
「やってみようぜ。こんなDACTも面白い。そうだ、俺達が勝ったら、後でデートに付き合えよ」
「え?」
イサムは足を止めて、クルリと振り返った。
「ゲームには、ご褒美がつきものだろ。メロディちゃんは、何を賭ける?」
メロディは目を伏せた。
「そんな……私なんか連れまわしても面白くありません」
「そう言わずに、楽しくやろうぜ」
「それでしたら…私達が勝ったなら、部下達にディナーを奢っていただけますか?」
再びイサムを見上げた琥珀色の瞳には、力が宿っていた。
「うひょ、それは懐にキビシーな。判った」
イサムは笑うと、サムアップして見せた。

イサム達が搭乗するVF-19FBは軍の払い下げではなく、メーカーの新星インダストリーから納品されたファイヤバーズ専用にカスタマイズ済みの機体だった。
エンジンは新型に換装され、VFC(渦流制御器)も最新の技術を反映して改良型に置き換えられた。結果、大気圏内での機動能力はオリジナルより向上し、新統合軍のルーキー達にとって手強いアグレッサーであり続けた。
“ファイヤーバード1、どういう手で行きます?”
イサムの僚機ファイヤーバード2に乗るのは、イサムの現役時代からの付き合いがあるベテランパイロットだ。
「そだな……まあ、向こうのほうが機が多いから包囲してくるだろう。包囲させて、微塵隠れの術でも使うか」
コクピットに収まったイサムは機体をチェックする手を休めずに、答えた。
“久しぶりに使うトリックですね”
「派手に行こうゼ」

VF-31は短い滑走距離で舞い上がり、桁違いのパワーを見せ付けた。
3機のAIF-10Aがカッチリとした編隊を組んで続いた。
“アストライアー1、良いんでしょうか? 戦力差がありすぎですが”
僚機からの通信にメロディは微笑んだ。
「ダイソン中佐は、自信満々のご様子よ。容赦なく落としてさしあげましょう。今夜のディナーは中佐の奢りです。惑星エデンには美味しいものがいっぱいあるそうだし」
“了解”
VF-31の編隊は、演習空域へと進入した。
「エイドロン、ハウンド!」
メロディのコマンドを受けて、AIF-10Aは散開。索敵モードに入った。
AIF-10Aが画期的なのは、簡単なコマンドセットによりパイロットの意図を察し、自律行動でサポートする機能だ。
程なく、AIF-10Aが2機のVF-19FBを捕捉。空戦機動に入った。
「エイドロン、ケージ!」
メロディは無人機にイサム機を包囲させようとして、感嘆した。
惑星エデンの大気圏を知り尽くしたイサムは、加減速に風の動きを組み合わせて、AIF-10Aに照準を絞らせない。
無人機の加速性能や旋回半径は、脆弱な人間を乗せていない分、遥かに優れているはずなのに、2機のVF-19FBは連携を崩さない。
「…さすがね」
AIF-10Aから通信が入る。
“キャプチャー”
6機のAIF-10Aは、イサムたちを頂点とする多角錐の頂点に遷移し、ようやく包囲網を完成させた。搭載した重量子ビーム砲が押し包むようにVF-19FBに襲いかかる。
ビームの軌跡は前方を塞ぐように伸びているので、これを回避しようとすると減速を強いられる。そこに後方から迫ってきたVF-31の攻撃が襲いかかる。
メロディ達はビームを檻の格子に見立て、このフォーメーションをケージと呼んでいた。
VF-31はガンポッドの照準をイサム機に合わせトリガーを押し込もうとした瞬間、VF-19FBのウェポンベイ(ミサイル格納庫)が開いたのを視た。
飛び出したミサイルはモーターに点火せず、空気の流れでVF-19BFの後方に押しやられた。
「何っ?」
ミサイルが自爆。
もちろん、演習用の模擬ミサイルなので破片が散乱することはない。しかし、一瞬、センサー類がホワイトアウトした。イサム機を見失う。

「はっはー、これが微塵隠れの術ってヤツさ」
イサムは機をバトロイドモードにシフトさせる。戸惑っているAIF-10Aに狙いを定めて、ガンポッドで射撃。瞬く間に4機に撃墜判定を与えた。
微塵隠れの術は、イサムが忍者映画を見ていて思いついた戦術だ。安全距離ギリギリでミサイルに自爆させ、爆発に紛れて敵の死角に入る。

「下っ」
メロディはイサム機を発見。
パワーダイブで追随する。
僚機のアストライアー2も、残ったAIF-10Aを率いてイサム機を追う。
イサムのVF-19FBはすばやくファイターモードに変形して、低空へと逃れる。
グランドキャニオンと呼ばれる、壮大な侵食渓谷地形にもぐりこんだ。
“エイドロン、キル!”
アストライアー2は2機のAIF-10Aに積極的な攻撃を命じる。
複雑に入り組んだ渓谷では、VF-31の機体サイズが仇となる。
AIF-10Aのサイズは全長でVF-19の半分ほど。こういう状況では強みを発揮する。
「逃がしません!」
メロディがイサムの予測軌道を戦術AIに調べさせながら、ファイヤーバード2の位置を索敵しようとした瞬間。
“わぁ!”
アストライアー2に撃墜判定。
後ろ上方からファイヤーバード2による鮮やかな一撃離脱の攻撃だった。
「なんてこと!」
イサムは自らを囮としたのだ。
メロディは残る2機のAIF-10Aのコントロールを引き継ぎ、VF-19FB相手に戦いを継続した。

「やるねぇ」
アストライアー2を撃墜されてから、メロディはイサム機の後を追ってグランドキャニオンの渓谷に逃れた。
絶対有利な位置にいたファイヤーバード2が撃墜しようと突撃したところ、人間では不可能な旋回半径で回り込んだAIF-10Aによって撃墜された。
イサムが自らを囮としたように、メロディも自分を囮としたのだ。
モデルのようなルックスながら、闘志も、度胸も十分のようだ。機転も利く。
「天使とダンスタイムだ」
1対1の戦いは、演習がタイムアップとなるまで続いた。

ニューエドワーズ基地テストフライトセンターに戻ってきたVF-31とVF-19FBを関係者が拍手で迎えた。
機体から降り立ったイサムがメロディに話しかける。
「勝負は引き分け、かな?」
メロディは額の汗を手の甲で拭って笑った。
「いいえ。最新鋭の機体を揃えて戦果がこれでは……私達の完敗です」
敬礼してから、メロディは続けた。
「どこへなりとお供します」
「へぇっ、どーこでも良いんだな? 本当に?」
イサムがいたずらっぽい口調で念押しすると、琥珀色の瞳がほんの少し揺らいだが、きっぱりと言い切った。
「女に二言はありません」
「よろしい。フォーマルじゃなくていいけど、お洒落して来るんだぞ」

イサムがメロディを案内したのは、郊外にあるダイニングバー『百花庭園』だ。
名前の通り、エデン原産、地球産を問わず、様々な花が咲き乱れる庭園と、眺めを楽しめる席が自慢だ。
店内にはステージがありショウも楽しめる。
ラフなスーツ姿のイサムが、小紋を着たメロディをエスコートして店に入ると、一瞬注目を集めた。
「目立ってるね」
予約席に座るとイサムが言った。
「和服が珍しいのでしょう」
メロディの装いは、縹(はなだ)の地に青海波と千鳥を白く抜いた小紋に藍鉄の帯を合わせている。
高く結い上げた黒髪とうなじの白さが新鮮に見えた。
「素敵なお店ですね」
今の季節はウッドデッキの上にしつらえられた葡萄棚から、葡萄の房がぶら下がっている。
「ありがと。ツレの店なんだ」
イサムは慣れた様子で、メニューを見ていた。メロディの希望を尋ねてから、コース料理を注文する。
オーダーを受けたウェイターもイサムとは顔見知りのようだ。
地球型惑星エデンは比較的初期に植民された惑星で、食材も豊富にそろっている。
バラエティに富んだメニューに舌鼓を打っていると、ステージにスポットライトが灯った。
光の中に登場したのは、黒のイブニングドレスにシルクの長手袋を付けた女性だった。イサムと同年代の中国系で、ほっそりとしたスタイルだった。
古めかしい形のマイクをセットしたスタンドに手をかけて、しっとりとしたウィスパーボイスで歌う。

 私達は互いの翼になるために生まれた
 どこまでも高く遠く
 Fly high

歌が終わると、メロディは拍手を送った。
両親が歌舞伎役者と歌手の家に生まれ育ったメロディが聞いても、今の歌は素晴らしかった。
「拍手、ありがとう……楽しい時間をお過ごしください。次の曲は、皆さんのお気に入り。Earth, Wind & Fire のナンバーから September」
ファンクミュージックのスタンダードが軽快なリズムに乗って流れ出す。
その後、2曲ほど歌うと歌手はステージを降りて、イサムのテーブルに来た。
「また、若い女の子を連れてきて。ちょっとは年のことを考えなさいよ」
白いシルクの長手袋をつけた手がイサムの肩に置かれた。
イサムは、その手を軽く叩いた。
「ご挨拶だな。売上に協力してやってるンだぜ。紹介しよう、こちら、メロディ・ノーム中尉。惑星フロンティアから遥々来たんだ」
「軍人さんなのね…初めまして、メロディさん。ミュン・ファン・ローンよ。私のお店にようこそ。もしかして、シェリル・ノームさんと関係がお有り? 娘さんがパイロットって、テレビの対談で仰っていたと思うのだけど」
「初めまして。お会いできてうれしいです。シェリル・ノームは私の母です」
メロディはミュンと握手した。
気を利かせたウェイターがミュンのために椅子を運んできて、三人でテーブルを囲んだ。
「そう…やっぱり、イサムが無茶言ったのね。ごめんなさいね」
メロディが店に来た経緯を話すと、ミュンがとりなした。
イサムはミュンの隣で苦笑しながら女同士の会話を聞いている。
「そうそう、近く、早乙女悟郎さんとレコーディングする予定なのよ」
ミュンが言ったのは、メロディにとって双子の片割れの話題だった。
歌舞伎役者であり、ミュージシャンでもある悟郎は子供の頃から息の長い芸能活動を続けていた。
「ビシビシ鍛えてあげてください。芸能界のサラブレッドと言われている割には打たれ強いヤツなんで。私も今日はイサムさんに鍛えられました」
メロディが笑う。それから目を店の内装に転じた。
「あの写真は?」
壁にいくつものフォトフレームがかかっている。ここのステージで歌ったり、演奏したりしているアーティストの写真だった。
「ここのステージから巣立っていった子達よ。ここ20年で、かなりの人数になったわ」
ミュンは自分自身も歌手活動を続けている傍らで、若い才能に歌う場所を提供していた。今は、歌手としてよりプロデューサーとして知られている。
イサムもミュンも、それぞれの道を歩きながら、寄り添って生きている。
そんな伴侶を、いつか見つけることが出来るだろうか。
メロディは自分を待ち受けている未来に思いを馳せた。

2009.09.19 
惑星エデン。
「はい、こちら民間軍事会社ファイヤーバーズです。いつもお世話になっております。はい、はい。ただいま確認しました。はい。ありがとうございます。では、そのように。後ほど、訓練計画書をお届けしますので、ご確認ください」
オフィスでオペレーターが大口の顧客(要するに新統合軍)からのコールを受け付けた。
「会長、会長の大好きなお仕事入ってますよ」
オペレーターがハードコピーを高々と差し上げて振った。
「んー、何々?」
ファイヤーバーズCEO(最高経営責任者)イサム・ダイソン退役中佐は、ハードコピーをひったくった。
「うひょ、DACT(異機種間戦闘訓練)じゃーん」
50代の入り口にさしかかったイサムは、訓練に参加する気満々だ。
「相手は…あんま聞いたことない部隊だな。アストライアー小隊……所属は惑星フロンティア第1艦隊。また、遠くから。こりゃー、腕によりをかけて歓迎しないとね。小隊長は、メロディ・ノーム中尉?」
そこまで読みあげると、オフィスがざわついた。
「え、あの、ノーム中尉が来るのかっ」
「マジ?」
「大マジ」
その中でイサムはキョトンとしていた。
「そんな有名人?」
「会長、この人っすよ」
若いスタッフが差し出したのは、新統合軍が出している広報誌だった。表紙を飾るのは、長く伸ばしたまっすぐな黒髪と、力のこもった琥珀色の瞳が印象的な女性士官だった。
「モデル?」
「違いますよ。現役パイロットですってば。まあ、モデルでも通用するルックスですけどね。なんせ、ほら、シェリル・ノームの娘だし」
「ああ!」
イサムの頭の中で情報と記憶が繋がった。
「早乙女アルト大尉の娘さんか。大きくなったなぁ」
言われてみれば、アルトの面影を強く受け継いでいる。
「こいつぁ、楽しみだ。親父さんの才能を受け継いでるなら、手強そうだ」
イサムは懐かしげに、かつてアルトと空戦の技を競った対抗演習を思い出していた。

民間軍事会社とは、軍隊の業務の一部を外注で請け負う営利企業だ。
惑星エデンのファイヤーバーズは、イサムが新統合軍から退役した後に起こした会社で、バルキリーパイロットの訓練を主要業務としている。
他にはイベントでの展示飛行やエア・レースへの参加、テストパイロットの派遣も行っていた。
使用する機体は主に統合軍払下げのVF-11やVF-19、VF-22。
殊に、イサムがアグレッサー(仮想敵)を勤めるDACTは、新統合軍の新米パイロットたちからは登竜門として人気があった。対戦を希望する者は多い。

ニューエドワーズ基地テストフライトセンターは、イサムにとってパイロットとしての半生を過ごした場所だ。ネズミの穴の数まで諳んじている。
駐機場に見慣れない機体が並んでいた。
かつてのVF-1バルキリーと比較して、全長で1.5倍はありそうな大型機だ。
惑星フロンティアで開発されたVF-31アルケー。所属はフロンティア第1艦隊。
「へぇ、コイツがね」
パイロットスーツ姿のイサムも初めて見る機体に興味津々だった。
全体のフォルムはVF-22に少し似ている。かなり厚みのある機体で、その内部に巨大な戦術コンピュータと動力源、冷却機が搭載されていた。
VF-31に随伴する無人機AIF-10Aエイドロンと連携し、戦うための装備だった。
長い機首に、大きな可変翼を広げた形は白鳥にも見える。そばには鏃のような形状のAIF-10Aが控えている。
1機のVF-31に対して、AIF-10Aは3機。一人のパイロットで、かつてのVF小隊並みの火力をコントロールすることになる。
「ますますもって、人間の戦いじゃなくなってきたなぁ」
イサムはAIF-10Aのボディを撫でながらため息をついた。黒く鏡面加工された無人機の装甲がイサムの顔を映し出す。
老いが皺を刻んでいる。
「お言葉ですが、ダイソン中佐」
女性の声に振り返ると、長い黒髪を後ろで結わえた女性士官が立っていた。
「最後に勝負を決めるのは人間の意志です。兵器だけで戦いは遂行できません」
凛とした声は耳に心地良い。ピシリと軍礼則通りの敬礼をする。
「歌手になった方が良かったんじゃないか? メロディ・ノーム中尉」
ニヤリと笑ってイサムは付け加えた。
「今は民間人だ。階級は要らないぜ」
「ダイソンCEO、とお呼びした方が?」
メロディの視線は挑戦的だった。気は強いらしい。
「いや、イサムでいいな。うん、それがいい」
その返答には意表を突かれたらしい。メロディは二の句を継げなかった。
「イサムって呼んでくれよ」
「え、では……イサム…さん」
さすがに呼び捨てにするのははばかられた。メロディは遠慮がちに、さん付けにした。
「大変よろしい」
イサムはVF-31を振り返った。
「メロディちゃんの言葉が本当かどうか、もうすぐ判る」
DACTが始まるまで、2時間ほどだ。

(続く)

2009.09.17 
2059年9月。
グロームブリッジ星系、惑星エデン、新統合軍ニューエドワーズ基地。

可変戦闘機が並ぶ一画で、イサム・ダイソン中佐は愛機だったVF-24エボリューションの機体を撫でていた。
「お前の事が嫌いになったんじゃないんだぜ。今でも頼りになる、大事なパートナーだ」
コクピットの下に書き込まれたイサム・ダイソンの名前を指先でたどる。
「でも、VF-26も手塩にかけて育てたコなんだよ。今日は、あっちの晴れ舞台だからな。いいコにして待ってろよ」
機体に語りかける様子は、まるで二股かけた男の言い訳みたいだ。
パンと、軽く掌で機首の先端近くを叩くと、イサムはVF-24に背中を向けた。

格納庫前の駐機スペースには、演壇が設えられていた。
来賓並びに報道陣の前で、演壇に上がっているのは礼装姿の基地司令だ。
「本日は、VF-26量産1号機が、新星インダストリーから納品された記念すべき日でありましてー」
基地司令はカメラの砲列の前で、長々と挨拶をしていた。
「今回の計画は、VF-24以降、見直されてきた有人戦闘機の価値を高めるべく始まった計画でして、やはり勝利をもたらすのは、ゆるぎない人間の意志と新統合政府への忠誠であります…」
司令の合図で格納庫の耐爆ドアが開き、話題の新型可変戦闘機がしずしずと現れた。
VF-19エクスカリバーの面影を受け継ぐ前進翼の白い機体が、陽光をキラリと反射した。
「御覧下さい、これがVF-26。ペットネームはマサムネです」

VF-26のコクピットでは、デモンストレーションのパイロットを務めるイサムが、大きな欠伸をしていた。
「いいから、さっさと飛ばせろよっての」
“こちらコントロール。カタナ1、そんなに大きな欠伸したら、撮影されちゃいますよ”
この日、イサムに割り当てられたコールサインで通信機越しに呼び掛けたのは、新星インダストリーのベテラン技術者ヤン・ノイマン主任だ。
「せっかくバージンのカワイ子ちゃんとデートってのに、延々オヤジの話を聞かされるんだもんなぁ」
ヤンとは、VF-19開発計画以来の長い付き合いだった。あの頃は、ソバカスだらけのティーンエイジャーだったが、今では鼻の下に髯を蓄えた30代半ばの男だ。
“司令の話が長いの、今に始まった話じゃないでしょ?”
「あーもー、飛んじゃおうかなぁ」
イサムは退屈のあまり、掌をヒラリヒラリと動かした。展示飛行での機動をイメージしたトレーニングだ。
“ダメですよ。今、降格されたら。恩給が減っちゃいますってば。どうせ、退役直前の昇進なんて、ありえないんでしょ?”
ヤンは笑顔で窘めた。
上官への反抗的な態度と複雑な経歴のため、イサムは長らく昇進できずにいた。
“どうです。そろそろウィングマーク(戦闘機操縦資格)取り上げられるんでしょう? 軍を辞めてウチに来ませんか?”
かねてより、ヤンはイサムを新星インダストリーの開発部門へ来ないかと誘っていた。
イサムの返事は、いつも同じだ。
「ああ、考えとくよ」
“期待しないで待ってます。そういえば、フロンティア船団の事件、聞きました?”
イサムは、声をひそめた。
「聞いてる。どうも入り組んでいて良く分からないな」

発端はバジュラと呼ばれる異星起源の生命体だった。
従来のフォールド航法を遥かに超える跳躍距離で銀河を移動する完全生物。
バジュラの体内に生成されるフォールドクォーツと呼ばれる鉱物をめぐって、移民船団マクロス・ギャラクシーと、マクロス・フロンティア船団が戦闘状態に突入した。
その過程で、バジュラを支配下においたギャラクシーが、全銀河の人類社会を武力制圧せんとして、バジュラをエデンや地球、その他の主要な移民船団に差し向けた。
イサムもエデンを襲ったバジュラの群を迎撃している。
最終的にはフロンティア船団が勝利し、ギャラクシー船団の野望を挫いた。
新統合政府は、異種知性体であるバジュラとの交渉を始めたと言う。

“新統合政府は、ギャラクシー船団の解体を決定したそうですね”
「そりゃ、当然、そうなるだろう」
イサムは頷いた。

移民船団ぐるみの大規模な犯罪は、新統合政府始まって以来の事件だ。その重大さから言っても、厳格な対処が必要になる。
エデンの軍関係者の間では、ギャラクシー船団の解体にあたって戦力を派遣すると噂されていた。
大規模なギャラクシー船団ともなれば、保有する戦力は小さな国家並みだ。
抵抗も予想されるため、新統合軍は主要植民惑星や、移民船団から戦力を抽出し、連合艦隊を編成する予定だ。

“エデンからは、VF-26部隊を出すそうですよ。行きたいでしょう?”
「そりゃな。他所の艦隊に、こいつをセールスするチャンスだし……あっちこっちの離れた所の部隊と顔合わせするのも面白そうだ」
“じゃあ、お行儀良くしてくださいよ、ダイソン中佐”
「ったく悪知恵が回るようになったな、ヤン
そんな話をしている間に、いよいよVF-26による展示飛行の開始時間になった。
“カタナ1、発進許可、出ました。グッドラック”
「サンキュ」

名刀の名を冠したVF-26は、ペットネームに相応しい鋭い軌跡を描いて、雲ひとつない青空へ駆け上った。
重力を断ち切るような勢いに、観客から讃嘆のどよめきが湧きあがる。
「どうです、素晴らしいでしょう?」
満面の笑みを浮かべた基地司令は、来賓に向って誇らしげに言った。
VF-26は魔法のように小さな半径で旋回し、白いスモークで青空のキャンバスに絵を描く。
次第に形になるイサムの絵を見ている内に、基地司令の笑顔が引きつってきた。
「あ、あれ、リンゴの形ですね。なんでリンゴなんですか?」
記者の質問に基地司令は、引きつった表情をごまかしつつ、にこやかに言った。将官を目指すほどの軍人なら、演技の素養も必要だ。
「さあ、なんででしょうね? 苦労の多かった開発が終了して、VF-26という果実が得られたと、そう言いたいのかもしれませんね」
もちろん、基地司令は知っていた。
リンゴの絵は、イサムから上層部への皮肉だった。
イサムは、彼が関わった人工知能暴走事件・通称シャロン・アップル事件について、口を噤むように強制されてきた。事件には軍の一部も関係していたため、機密保持を理由にした緘口令だ。
スモークで描かれたリンゴの中央を貫くように、VF-26が飛び出した。
観客の間から、拍手が起こった。

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2009.07.18 
2059年。
銀河中心領域で、フロンティア船団がバジュラ女王の惑星をめぐって乾坤一擲の決戦を挑んでいた頃。

意識が眠りの淵から急速に現実へと浮上してきた。
まだ重たい瞼をこじ開ける。
サイドテーブルの上を手探りして、バイブレーションしている携帯端末を掴んだ。
「……んー」
もしもしと言おうとして、口を開いたところで向こうが呼びかけてきた。
「ダイソン中佐、こんな時間に失礼します。現在、惑星エデン全土に、コンディション・ブラッディーマリーが発令されました。可及的速やかにニューエドワーズ基地に出頭して下さい」
スピーカーから聞こえてきた声は、緊張感に満ちていた。
ブラッディーマリーは、防衛体制が最高レベルの警戒度になったことを示す符丁だ。敵が目前に迫っている。
「あー、何の冗談だ? 今…」
寝癖のついた褐色の髪を撫でつけながら、イサム・ダイソン中佐は携帯の時刻表示を確認した。
「午前3時過ぎだぜ」
「残念ながら、冗談でも訓練でもありません。敵が攻め寄せて来ています。コード・ヴィクター……恒星間センシング・システムがホワイトアウトしています。大群です」
「あぁっ?」
がば、とイサムは起き上った。
レーダースクリーンが敵の反応で真っ白になるほどの大群。
「判った、すぐ行く」
「迎えを差し向けています」
「了解」
そこで通話を切った。着信履歴を見ると、相手は間違いなくニューエドワーズ基地の司令部からだった。
「畜生」
小さな声で罵った。
「……どうしたの?」
イサムが横たわるベッドの上、隣で寝がえりをうった東アジア系の女性は、ミュン・ファン・ローン。幼馴染であり、パートナーの女性だ。
「軍から呼び出し」
「こんな時間に?」
ミュンも彼女の携帯端末に手を伸ばした。
「ちょっとした非常事態らしい。行ってくる」
「行ってらっしゃい」
ミュンは体を起こして、イサムの頬へおざなりなキスすると、また枕に顔を埋めた。
「おいおい、もうちょっと色気のあるキスが欲しいなぁ。この星を守るために出るんだぜ」
イサムはベッドを抜け出して、クローゼットから軍服を取り出した。
「バルキリーで飛ぶんでしょ? だったら心配してないわ」
ミュンイサムに背中を向けたまま、肩越しに手をヒラヒラと振った。
「イサムのする事を真面目に心配してたら、体がもたないもの」
パイロットにとって最高の殊勲を表すロイ・フォッカー勲章を半ダースほど受賞した新統合軍の名物男は、大げさな溜息とともに肩を竦めた。
「お前な、最近、冷たいぞ」
「信頼してるのよ、エースパイロットさん」
スラックスをはき、上着に袖を通したイサムは、ニヤリと唇をゆがめた。
「パパパパっと片づけて、朝飯前に戻ってくるからな」
「行ってらっしゃい」
ちょうどその時、家の前に停車する音がした。軍からの迎えなのだろう。
「行ってくる」
イサムは、かがんでミュンの頬にキスをすると寝室を出た。

車が走り去ってから、ミュンはベッドの上に座った。
寝室に備え付けられたAVシステムのスイッチを入れ、ニュースチャンネルを見る。
速報が流れていた。
エデン行政府から非常事態宣言が発令されていた。
状況の推移次第では、地下シェルターへの避難も始まる可能性がある。
ミュンは窓辺に立って、夜明け前の暗い空を見上げた。
イサムは、あの空の向こうへ行く。
行って戦うのだろう。
ミュンは夜明けが遠のくような感覚に襲われた。

ハンガー(格納庫)。
「ったく、ありったけの戦力をかき集めているな」
VF-24エボリューションのコクピットでイサムは情報端末から流れてくる軍の一般情報をチェックした。
LEO(低高度エデン周回軌道)上にデフォールドした多数の敵は、バジュラと呼称される生物兵器。現在、マクロス・フロンティア船団と交戦している勢力だ。
「俺みたいなロートルまで引っ張り出すたぁね。クリスタルパレス(防空司令部)も、なりふり構ってない」
イサムが率いる第508中隊の副隊長が、苦笑気味に言った。
「隊長がロートルなら、対抗演習で撃墜された連中は何ですか?」
「ヒヨッコさ」
多くのパイロットがウィングマーク(戦闘機パイロット有資格者を示す翼をかたどった徽章)を外す年齢になっても、イサムは一線で飛び続けている。
VF-24の開発でもテストパイロットとして関わってきた。
「じゃあ、この基地はヒヨッコばっかりです」
イサム程ではないが、惑星全土でも屈指のベテランである副隊長は笑いを含んだ声で言った。
巨大な機械腕が、VF-24にファストパックと呼ばれる追加装備を取り付けていた。惑星地表から、衛星軌道へ一気に駆け上がるために推力を増強する。
「んじゃ、戦術の確認な。中隊各機、聞いておけ。バジュラとやらの装甲は、えらく硬いそうだ。フロンティア船団と、民間軍事会社からの通報で、有効な弾頭の生産が始まっているが、まだ1会戦分も備蓄できていない」
対バジュラ仕様の弾頭は希少鉱物のフォールドクォーツを使用するため、量産が難しい。
「おまけに、バジュラは動きが早い。反則だよな。そこで、常に小隊(4機)単位で行動する。1編隊(2機)が囮になってひきつけ、残りの編隊で攻撃。無駄弾は撃つんじゃねぇぞ」
イサムは、通信機越しにメンバーたちの気配に耳を澄ませる。
歴戦の中隊長に鍛えられたパイロットたちは、それぞれ己の役割を心得ているようだ。
歯切れの良い“ラジャー”の声が返ってくる。
イサムは基地司令の口ぶりを真似て言った。
「前線の諸君、我々の補給は逼迫している。よって、弾は撃つな! 飯は食うな! 息はするな!」
通信回線は、苦笑、失笑、微笑、哄笑、さまざまな笑い声で満たされた。
ディスプレイに発進準備完了のサインが出た。
「行くぜぇ、野郎ども!」
イサムの乗る1番機から順に、滑走路に引き出されてゆく。

508中隊18機は極軌道で惑星エデンの大気圏へ突入しようとするバジュラの群を迎撃するべく、予測軌道をフルパワーでたどった。
“LEO防空航空団、損耗率30パーセント。継戦不能”
“防空衛星群による飽和攻撃に成功。与えたダメージは極めて軽微。2次攻撃の必要を認む。急げ”
“第32任務群、交戦空域へ急行中。反応兵器の使用は、これを許可。オール・ウェポンズ・フリー。繰り返す、反応兵器の使用許可が出ている”
“無人要撃隊、壊滅”
入ってくる情報は、新統合軍にとって旗色の悪いものだった。
「きびしぃーっ」
慣性制御システムで中和しきれない加速度に耐えながらイサムは大気圏突破のタイミングを心の中でカウントダウンしていた。
おそらく、目標の移動速度から見て、気圏を出た途端に攻撃されるだろう。
(何機、食われるか?)
翼が大気を切り裂いている手応えが、ふっと消えた。
「散開!」
イサムは操縦桿を操った。副隊長も遅れずについてくる。
いくつもの太い光条が星間物質を切り裂いて降ってくる。
バジュラの攻撃だ。
「艦砲射撃並みの出力かよっ」
ガンポッドの照準を示すレティクルの中央に、バジュラの姿が飛び込んだ。
赤いエネルギー転換装甲で覆われた、昆虫を連想させる生物兵器。
反射的にトリガーを絞る。
「ビンゴっ……中隊一番乗りは俺だぜぇっ!」
航宙器官を射抜かれたバジュラは、大気圏へとプラズマの炎をまとって落ちて行った。

地上のミュンが窓越しに見上げる夜空に、いくつもの流れ星。
あれは敵と味方の残骸なのだろうか?
天頂近くに現れた新星の様な輝きは、大型艦が爆発したのだろうか?
ミュンは胸の前で手を、ぎゅっと握り締めた。
かすれたウィスパーボイスが思いを紡ぐ。
「火をくぐり、この世の果てまで、行き着くところまで、あなたとともに……」

「そうさ……いいコだ。ベイビィ、ベイビィ、いいコだから、そのままっ……!」
混戦が続いている。
イサムは1匹のバジュラを引きつけながら、VF-24を操っていた。
照準を誘うように、すんでの所で狙いをずらし、危険な囮役を続けている。
わざと直線飛行して、きわどい誘いをかける。
読み通りバジュラが突っ込んできて、機関砲を放とうとする、そのタイミングで副隊長機が背後からバジュラの装甲を打ち砕いた。
「よっしゃぁ! よくやった」
“お誉めの言葉ありがとうございます。しかし、今ので弾切れです”
イサム機と翼を並べた副隊長が、小さく翼を振った。
「引き返したいところだが…」
中隊は善戦していた。なんとかバジュラ群を食い止めている。
“次の群が来てますね”
「仕方ない」
イサムは愛機をバトロイド形態に変形させた。
「これ、使え」
自分のガンポッドを副隊長機の方へ投げる。
“しかし、隊長…”
「俺の方が飛ぶのが上手い。お前の腕はまだまだだが、射撃は巧いからな。この方がいいだろ」
副隊長機もバトロイドに変形して、イサムのガンポッドを受け止めた。
空になったガンポッドを捨てる。
「いくぜ!」
再びファイター形態に変形したイサム機と副隊長機は、新たなバジュラ群に向けて加速する。
イサム機が、敵群の先鋒に誘いをかける。
今度は2匹が食らいついてきた。
「お、大漁だなこら」
おどけてはみたものの、額に汗が浮いてきたのを感じる。
丸腰に近い状態だ。
バジュラは相互に連携して、イサム機を追い詰めようとする。
「一応、チームワークみたいなこともしやがるんだな」
個体では知性を持たないと言われるバジュラだが、その動きは侮れない。
次第に高度が低下していく。
「おい、どうだ?」
副隊長に呼びかける。
“今、小型のバジュラが割り込んで…交戦中……撃墜! 急いで参ります!”
「当たり前だ、マクロスピードで急げ!」
2匹のバジュラは、上からイサム機を抑え込むように機動した。
イサムは、惑星エデンの上層大気が機体下面に触れるのを感じる。
「うは」
対気速度はマッハ60前後。
このままでは大気中に降りようとしても、高速過ぎて、惑星大気に弾き飛ばされる。
上はバジュラが押さえているし、左右に逃れようとしても2匹いるので、先回りされるだろう。
逃げ場がない。
「こんちくしょーっ」
イサムは愛機を横転させた。
機首を地表に向け、急角度でパワーダイブ。
惑星地表に対して翼を立て、空気抵抗を減らし、上層大気へと切り込んでいく。
無茶な動きに機体が軋む。
バジュラは予想外の動きに、慌てたようだ。
イサム機に追随してと大気へ飛び込もうとする。しかし、バジュラの形状はVF-24ほど空力的に洗練されていないため、大気の抵抗を受けて宇宙空間へ弾き飛ばされた。
“タリホーッ!”
姿勢を崩したところで、副隊長機の射撃を受けて撃墜される。
「よし!」
イサムはスロットルを押し込み、再び宇宙空間へと出ようとした。
“隊長! これは…”
今度は副隊長が戸惑ったようだ。
「バジュラが……引き返していく?」
多数のフォールド反応がキャッチされていた。バジュラ達が戦場から離脱している。
「なんで?」
“判りません”
全体の戦況は、明らかにバジュラ側優位に推移しつつあったはずなのに。

バジュラ女王の惑星で、人類の命運をかけた決戦がフロンティア船団の勝利で終わったのを、イサム達エデンの住人が知るのは、もう少し先のことになる。

イサムは副隊長に部下たちを任せて基地に帰投させると、単機で成層圏からゆっくり対流圏へと降りて行った。
濃密な大気がVF-24のデルタ翼を支えるのを感じるとエンジンを切って、風に乗る。
夜明けの光の中を東へ向けて静かに高度を下げていく。
(約束、今回も守ったぜ)
地球の空で散った友人に胸の中で語りかける。
幼馴染の親友で、空のライバルで、ミュンをめぐる恋敵だったガルド・ゴア・ボーマン。
ミュンを守ると彼に誓ってから、20年近く。
イサムは回想を振りきると、エンジンを再点火。
「家に帰ろう」
一気に高度を下げる。

まんじりともせずにイサムを待っていたミュン。
時計の短針が10時を回った頃、遠くから聞き慣れた音が響いてくる。
ミュンは玄関脇の窓から、空を見上げた。
ガウォークに変形したVF-24が舞い降りてくる。
「また、私物化して」
ミュンの口ぶりは怒っているかのようだったが、唇はほころんでいた。
キッチンにとって返し、トーストをセットし、コーヒーを淹れる。
玄関前にVF-24が着地した軽い振動。
「たぁだいまーっと」
イサムの声に、キッチンから顔だけ出す。
パイロットスーツ姿のイサムが、左手にヘルメットをぶら下げていた。
「なぁに、また戦闘機を私用に使ってるの?」
「あー、故障して不時着したんだ。それが、たまたま自宅前とゆーだけで」
「嘘おっしゃい」
「だって、朝飯前に戻るって約束したろー?」
イサムは空いている右腕で、ミュンの肩を抱くとキスした。
「子どもみたいな言い訳して。さっさと座って。戻ってこないかと思って、朝食片付ける寸前だったわよ」
ミュンに背中をたたかれて、イサムは食卓についた。
さっと出てきたトーストとベーコンエッグが焼きたてなのに気付いて、にっこりする。
「で、どうたったの? お仕事」
トーストにバターを塗りながら、イサムは眉間に皺を寄せた。
「んー、なんだか良く分からん敵が攻めてきて、良く分からんけど帰っていった」
ミュンは差し向かいに座ると、頬杖をついてイサムの様子を眺めていた。
「何、それ?」
「俺が説明して欲しい。まあ、人類の危機なんて、人生に1度ぐらいでいいんだからサ。とりあえず、お互い、無事で良かった。いただきまーす」
ブラックコーヒーでトーストを流し込んだイサムは、一言付け加えた。
「また、お前の歌が聴ける」

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2009.07.17 
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