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キャラクターの表現に関して、いくつかメモ。

■アニメーションらしいキャラクター
アニメーションは動きで表現する媒体です。
ですから、アニメーションのキャラクターらしい判断は、“あることをしない”より“あることを実行する”で表現できます。
文字で書くのですから、内省的でアレコレ考えた挙句に、結局行動しない、というキャラクターでもそれなりに話は作れますが、これではアニメーションのキャラクターっぽくなくなります。そこを逆手にとった話も考えられますが。

■ドラマが生まれる瞬間
オリジナルがあってキャラクターが確立している場合、一般にそのキャラクターらしからぬ行動をさせるのが難しい場合も多いです。その為に、話が行き詰まることもあります。
そういう時は、何故、そのキャラクターらしからぬ行動をとる必要があったのか、という理由を考えます。そこに葛藤が、ドラマが生まれるからです。
異性が苦手なキャラクターが、異性と触れ合う瞬間。
戦いが苦手なキャラクターが、戦わなくてはならない瞬間。
寡黙なキャラクターが、皆に訴えなくてはならない瞬間。

■梨園の御曹司
早乙女アルトは、幼少期、人間関係が非常に濃密な環境で育ちました。
歌舞伎の世界は、例外はあるにしても基本的に親戚・縁戚で受け継がれていく世界なので、閉じた世界ながら、親族・弟子・出入りの業者等、関係者は多いでしょう。
その中で、常に宗家の嫡男として、目上から期待され、目下からは手本と仰がれる立場でした。
子供の自分をさらけ出せるのは、体が弱く離れでひっそりとしていた母・美代の前だけ。だからこそ、母親に強い思い入れがあります。
しかし、美代に対しても病人だから、という部分で遠慮があったのでしょう。
多くの人間に囲まれていながら、孤独に耐える術を身につけざるを得なかったはずです。
美星学園に入学して、ミシェルと反発しながらも付き合いを続けていたのは、ケンカできるような対等な関係に飢えていたためかも知れません。

■銀河の妖精
実は、シェリルの幼児期も共通するものがあります。
早くに両親を亡くし、ギャラクシー船団のスラムでゴミをあさるような生活をしていたシェリルは、後にグレイスによって引き取られ、銀河の妖精としての道を歩みます。
家族関係が希薄であったため、周囲の人間の期待や評価に対して、やや過剰なまでに応えようとする姿勢が身についたのでしょう。
だから、アルトと惹かれあったのは必然だったのかもしれません。アルトに対してミシェルが対等な関係であったのと同じように、シェリルに対してはアルトが対等な関係を築ける最初の人間だったはずです。

■ミシェル
彼も天涯孤独となったために、周囲の目線を意識して生きてきたところがあります。
しかし、アルトやシェリルと違うのは、相手によって顔を使い分けている自分を意識できる年齢で孤児となった所でしょう。
そのため、アルトやシェリルの行動をある程度予測できるのです。
だから、二人ともミシェルに対しては後手に回ってしまう傾向があります。

■脚本家・吉野弘幸
こうした主要キャラクターの共通性は、もしかしたら脚本担当の吉野さんが、教師の職歴を持っていることに関係しているかもしれません。
教職は、ある意味、常に聖職者としての演技を要求される立場ですから。

2008.09.23 
前回が御好評いただいたようなので続編です。

前回、ショートストーリーを盛り上げるにはドラマが必要だ、と書きました。
今回はいきなり、それに反してドラマが無くてもショートストーリーは成り立つ、というお話です。

ショートストーリーであればディテール(細部)の積み重ねでも十分成り立ちます。
ディテールとは登場人物たちの性格・生活・技能・属している世界などを語る描写です。
その例として『奇襲』『一日艦隊司令』を取り上げます。

ディテールを積み重ねるのは良いのですが、相互に関連性や、リズムがあるのが望ましいでしょう。関連性やリズムがないと、散漫な印象になってしまいます。

『奇襲』は、三つのシーンから成り立っています。

1.アルトの将校教育
 ↓
2.ミシェルクランクランに誘われて、ジャズ・バーへと足を運ぶ
 ↓
3.ジャズ・バーでのミシェルクランの会話


三つの共通点は軍事です。それぞれ「奇襲」「作戦」「武装」など、軍事用語が散りばめられています。
そして、三つのシーンの展開は以下のようになっています。

1.アルトミシェルに説教される
 ↓
2.ミシェルクランに驚かされる
 ↓
3.ジャズ・バーで良い雰囲気だったのに、クランが失言してしまう


これが、リズムを作り出しています。登場人物はみんな、ちょっとずつ言い負かされたり、失敗しているのです。

『一日艦隊司令』も、三つのシーンから成り立っています。

1.美星学園での日常
 ↓
2.新統合軍フロンティア艦隊
 ↓
3.バルキリーのコクピットに居るアルト


共通点は宇宙です。パイロットとしての専門性を感じさせる描写や、無重力を感じさせる描写が続いています。
お話の展開は『奇襲』とは異なり、

1.日常
 ↓
2.非日常
 ↓
3.非日常の中で日常への帰還を決意する


このような形でリズムを作り出しています。
その為に、セリフでつながりを持たせています。

「あんだけ派手なことやらかして、関係ないなんてあり得ないだろ。まったく試験のヤマは当てるくせに、どうしてこーゆー方面は鈍いのかね、お姫さまは」(ミシェル
 ↓
「気をつけて……アルト! この次は試験のヤマ、教えなさいよね!」(シェリル
 ↓
「言われなくたって。試験のヤマを教えないといけないもんな……おちおち死んでもいられない」(アルト


共通点やリズムは他にもたくさんのパターンもあります。
さーて、次はどんなお話にしましょうか。

2008.06.17 
今回はショートストーリーではなく、筆者の視点でショートストーリーの作り方をお話ししましょう。
素材は某掲示板の、この書き込み。

317 :名無しさん:2008/06/16(月) 03:01:15
シェリルのブログにあった【ペール・クリーム】って
シェリー酒のことだったのね……。
なんでも、男といるときに『シェリー酒が飲みたい』と言うと
【今日はお持ち帰りしてください】と言ってるようなものなのだとか。
エロはかけないから某所に投下はできないけど、
このネタで1本書いて、どっかで展示できたらいいなぁ。


いいですね。
シェリルの部屋で、アルトと二人、グラスを傾ける。
非常に素敵です。

シェリルアルトにグラスを渡した。
「これは?」
アルトはグラスを照明に透かして見た。薄い黄金色の液体がきらめく。
「ペール・クリーム、よ。飲んでみて」
シェリルもグラスを傾け、一口飲む。
アルトもそれに続いた。
「これ、甘くてすっきりしてるけど、強いな。まるで……」
シェリルのようだ、と言おうとしてアルトは思いとどまった。これ以上、シェリルをつけあがらせると、主導権を握られっぱなしになる。
「まるで、何よ?」
「い、いや。なんでもない」
「はっきり言いなさい」


アルトとシェリルという、筆者が明確にイメージできるキャラクターであれば、これでもそれなりにお話を作ることはできます。
しかし、盛り上がりがない。
それはドラマが無いからです。

ドラマには、色々な定義がありますが、ここでは、
“登場人物が抱えている葛藤が、登場人物の行動によって克服されること”
としておきます。
そこで、アルトがシェリルの部屋でシェリー酒を傾けるまでに葛藤を設定してみます。
葛藤の内容は様々なものが考えられますが、大切なのは葛藤に立ち向かう登場人物が魅力的に見えなければなりません。
たとえば、アルトがバルキリーの性能限界を超える敵と戦う、というのは非常に盛り上がります。父親と対決するのも良いでしょう。しかし、学園の成績を上げようとするのは、コミカルな印象を与えます。切迫感がないですから。
シェリルであれば、歌へのプロフェッショナル意識がうかがえるエピソードがカッコ良いですね。
ここでは、アルトとシェリルの二人を想定していますので、二人の葛藤が重なり合うと、更に劇的でしょう。

ドキュメンタリー『銀河の妖精、故郷のために銃をとる』の編集で、ちょっとした論争が発生した。
「ダメよ! こんなシェリル、見せられない」
シェリルが、いくつかのカットにダメ出しをした。
それまで、静かに編集作業を見ていたアルトが異を唱えた。アルトは軍事関係のオブザーバーとして臨席していた。
「いや、このシーンは入れるべきだ」
画面では、シェリルがVF-25Tのコクピットから降り立った途端、へたり込んでしまった様子が映されている。
「こんなの……シェリルのイメージが傷つくわ。それだけは譲れない」
眉を吊り上げて、アルトを睨むシェリル。
「歌やコンサートの演出だったら、お前の言うことが正しい。だが、これはドキュメンタリーなんだろ? シェリルがどれほどキツい訓練をこなしているのか、それが判るカットじゃないか。入れるべきだ」
アルトも引かすに理詰めで諭すと、シェリルは厳しい視線でモニターを見た。
「パイロットの訓練は厳しい。俺達だって何度も血反吐を吐いてきたんだ。それを、シェリルが涼しい顔をしてクリアしてみろ。経験者には一発で嘘ってばれる」
アルトの言葉に、シェリルは唇を噛んだ。
「オーケイ」
議論が膠着しかけたと思ったプロデューサーが仲裁に入った。
「30分休憩を入れよう。それから、もう一度チェックしてくれ」


こんな葛藤はいかがでしょうか?
シェリルとアルトの間の対立。どちらも、自分の仕事に誠実であろうとするあまりに譲歩できない。
こんなエピソードが一つあれば、ショートストーリーは引き締まり、盛り上がります。
後は、シェリー酒が登場する際に唐突と思われないように、冒頭に少し伏線を入れれば完璧。

さて、これだけの部品を組み立ててみましょう。
下のリンクをクリックなさってください。

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2008.06.16 
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