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仮想世界OZ。
格闘ゲーム『OMC』では、前代未聞の対戦が繰り広げられていた。
OMCの英雄『キング・カズマ』、対、謎のルーキー『アルマース』。
円形のフィールドの中央で、擬人化された白ウサギ戦士・キング・カズマは無造作に両手をジーンズのポケットに突っ込んでいた。
彼の戦いを知る者であれば、それがキング・カズマにとって攻撃の構えであると判るだろう。まるで居合のように、ポケットから神速で繰り出されるパンチは、数多くのライバル達に苦杯を舐めさせてきた。
一方、アラビアンナイトの世界から抜け出してきたような黒い肌の舞姫アルマースは、スロウ・ダンサーとあだ名される通りにキング・カズマの周囲をゆるやかに舞いながら回っていた。長い手足が優美に動くと、腕環や足環がシャランと音楽を奏でる。両手に握った曲刀の輝きでさえ、舞の動きを引き立てていた。
試合開始から、残り時間10秒を切るまで、奇妙な均衡状態は続いていた。
キング・カズマは、フィールドの中央でただ立ち尽くしているかのように見えたが、長いウサギ耳が左右交互にピンピンと動いていた。どうやら、アルマースの舞のテンポを測っているようだ。
オーディエンス達は焦れていたが、この奇妙な戦いの帰趨を見定めようと、モニターの向こうで目をこらしている。
残り時間が9秒となった瞬間、誰もがこのままタイムアップのドローゲームとなるのを予感した。
均衡を崩したのはアルマースからだった。
キング・カズマの背後から大きくジャンプ。まるで、バレエのグラン・ジュテ(大跳躍)のように遠い間合いから、一気に切りかかる。
キング・カズマは刃を上体をかがめて避ける。そのまま頭を脚につくほど下げ、反動で右足を後方へ高々と跳ね上げた。
踵が、アルマースのボディにカウンターで入る。
高々と跳ね上げられた黒い舞姫に、非情の空中コンボが襲いかかる。キング・カズマの後ろ回し蹴りが連続で決まり、とどめは下から蹴り上げるサマーソルトキック。
“K.O.”
“Winner is King Kazuma!"
システムの判定が下った。
長い膠着状態と、一瞬で決まった勝敗。。
鮮やかな決着に、オーディエンスから歓声が上がった。
キング・カズマの伝説がまた一つ、付け加えられた。

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「観たよ、スロウ・ダンサーとの勝負」
小磯健二は東京にある自宅の部屋で、名古屋の池沢佳主馬からの電話を受け取った。
“健二さんのアドバイス、すごく役に立った。ありがとう”
普段、口数の少ない佳主馬から素直に礼を言われると、けっこう嬉しい。
「いやいや、やっぱり佳主馬くんが凄いんだよ。大一番での集中力とか…」
“へへっ”
感情を露わにしない佳主馬だが、嬉しさを噛みしめているらしい。
「あれさ、掲示板とかだとダンサーが痺れを切らしてアタックしたみたいに書いてるけど、実際はどうなの? 僕には佳主馬くんが誘いをかけたように見えたんだけど」
“あ、判った?”
「うん、ウサギ耳が両方揃って、ペタって寝かされてたからさ」
“えへへっ。うまく引っかかってくれた”
「してやったりって、トコだね」
“話変わるけど、またアドバイスをお願いしたいことができたんだ”
「なに?」
“あの……東京で、外国から来た人、案内するならどこに連れて行く?”
ちょっと意外な質問に、健二は少し考えた。
「そうだな……どこの国から来る人? 何に興味があるの?」
“ケニアから。アルマースのプレイヤーなんだ”
佳主馬の説明によれば、来月12月に東京でOMCフェスティバルが開催される。オフィシャルイベントで、プロプレイヤーである佳主馬も招待されていた。
アルマースのプレイヤーは、佳主馬と同じ年ごろの少女で、名前はジュリ・オルワと言う。彼女もOMCフェスティバルに合わせて来日するのだそうだ。
「ケニアかぁ」
健二は目の前にあるパソコンで軽く検索してみた。時差は日本から見てマイナス6時間。遠い。
健二自身、ドキュメンタリー番組で見る以上の情報は持ち合わせていない。
「でも、ゲームの後で仲良くなったんだね」
健二が言うと、佳主馬は少し慌てて言い訳するように答えた。
“む、向こうから勝手に話しかけてきて、会おうって…”
OZのネットワークは高度な自動翻訳機能を備えていて、世界中の主要な言語35種類なら、相互に即時翻訳してくれるため、外国のユーザーとも意思の疎通ができる。
最近の携帯電話は、この翻訳機能を組み込んでいるので、リアルでの会話も楽になった。
「女の子なら、夏希さんにも意見、聞いた方がいいね。じゃあさ、佳主馬くん、そのジュリさんだっけ? 何を見たいか聞いておいてくれないかな。そしたら、調べておく」
“判った。ありがとう”

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2009.08.25 
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仮想世界OZ。
格闘ゲームフィールド『OMC(OZマーシャルアーツ・チャンピオンシップ)』では、盛大なイベントが行われていた。
スタジアムには、さまざまな姿のアバター(仮想世界内におけるユーザーの分身)が詰めかけていた。
中央のグラウンドに設えられた表彰台の上に現れたのはウサギを擬人化した姿のアバターだ。
「キング・カズマ!」
「覇王KAZUMA!」
「King of kings!」
さまざまな言語で、ウサギ戦士の名前が連呼され、その栄誉を称えられる。

OZ始まって以来の危機となったラブマシーン事件は、巨大なOZのシステムそのものがAIによってハッキングされ、現実世界のインフラストラクチャーにも影響を及ぼすという前代未聞の事態にまで発展した。
しかも、ラブマシーンと呼ばれる攻撃性AIは、アメリカ合衆国国防総省に属するDARPA(国防高等研究計画局)が開発した情報兵器であり、事件は実戦テストがきっかけとなって拡大した事が暴露された。
最終的には時の国防長官が更迭される騒ぎとなった。

キング・カズマは、ラブマシーンに止めを刺し、OZと現実世界の秩序を取り戻したヒーローだ。
OMCファンに推戴される形で、彼は王の中の王、King of kings の称号を授けられることとなった。これは運営側ではなく、ユーザー側が発案した一種の名誉称号で、チャンピオンシップの成績とは関係無い。
「我等が英雄、キーング・カーズーマ! 入場!」
顔が古いブラウン管テレビのアバターの司会で、セレモニーが始まった。
BGMに流れるのはお馴染み Kool & the Gang の Celebration。
王冠を捧げ持つ、赤い髪に赤い瞳の美少女型のキャラクターは、ユーザーが居るアバターではなく、バーチャルアイドル『スカーレット・マゼンダ』。
シンプルなデザインの王冠は、その周囲に小さな流星のような光点が回転している。
カズマは、ちょっと身をかがめて長いウサギ耳を後ろに倒した。
爪先立ちのスカーレットが、ニッコリほほ笑んで王冠を載せる。載せたついでに、キング・カズマの頬にキスした。
「うぉー、チューしているぜぇ!」
はやし立てる司会。オーディエンスの歓声が、地響きを伴ってフィールドを揺るがす。
カズマは背を伸ばし、右手を高く挙げて応える。
「今の気持ちを一言!」
マイクを差し向けられてカズマは、少しためらったあと、マイクを受け取ってしゃべり始めた。
「King of kingsの称号……返上する」
「ええっ」
歓声は、驚きの声に変った。
「みんなの気持ちは嬉しい」
カズマは訥々と語った。
「でも、俺、ラブマシーンに勝てたのは、色んな人に助けてもらった結果だ。俺だけの手柄じゃない。それに、俺はチャレンジャーで居たい。もし……チャンピオンシップから引退する時が来て、それで、その時でも皆が、俺に King of kings の称号が相応しいと思ってくれるなら、受け取る」
カズマは両手で王冠を取ると、そっとスカーレットに返した。
「誰の挑戦も受ける。スタジアムで会おう」
拳を突き上げる。
先ほどに倍する歓声が観客席に沸き起こる。
アバター達が足踏みし、足の無いタイプのアバターもそれぞれのやり方でカズマにエールを送った。

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「あら、佳主馬(かずま)くんだ」
篠原夏希は携帯の着信を見て驚いた。
またいとこの池沢佳主馬から直接電話がかかってくるのは珍しい。
「もしもし」
通話ボタンを押して、携帯を耳に当てる。
“もしもし、夏希姉ちゃん。久しぶり”
東京に住む高校三年生で剣道部に所属する夏希と、名古屋に住む中学生でヘビーゲーマーの佳主馬とでは、共通する話題は少ない。どんな用件だろう?
「久しぶり。元気にしてる? キング・カズマの戴冠セレモニー見たよ。カッコ良かったぁ」
無難な挨拶を交わしたところで、佳主馬はポツリと言った。
“あの、健二さんの連絡先、知りたいんだけど”
夏希の疑問は解けた。佳主馬との数少ない共通の話題、それが小磯健二だ。
「うん、あ、ちょっと待って、隣に本人いるから……健二くん、佳主馬くんがね」
「あ、はい、判りました」
場所は新宿の喫茶店。
先ほど、二人で映画を観てきたところだ。清く正しい高校生のデートだ。
健二は携帯電話からOZにアクセス。
チャットルームを立ち上げた。

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チャットルーム内では、室内に入ったアバターが会話を共有できる。
丸く大きな耳を頭の上にのせた、ちょっと気の弱そうなアバターが、ケンジ=健二。
すらりと背が高く、長い手足を持ったウサギ頭がキング・カズマ=佳主馬。
袴姿で、長い黒髪を背中に流し、シカのような耳がついているのがナツキ=夏希だった。
「僕も、セレモニー見た。しびれるほどカッコ良かった」
ケンジが言うと、キング・カズマは長い耳をピクリと動かした。ちょっと照れたらしい。
「あ、ありがと……」
「僕に用って何だい? カズマ君の役に立てるかどうかわからないけど」
カズマはチャットルームの空間に動画を表示した。
どうやら、OMCでキング・カズマが対戦した記録らしい。
相手は、スラリと背が高く、黒い肌の女性型アバター。ベリーダンサーの様な露出の多い衣装をつけ、黄金の装飾品を煌めかせている。武器は両手に持った優美な曲線を描く曲刀。
「スロウ・ダンサーって知ってる?」
カズマの質問に、ケンジとナツキは首を横に振る。
「最近、ランクを上げてきたプレイヤーなんだけど、アバターの名前はアルマース……スロウ・ダンサーは、あだ名なんだ」
動画の中で、カズマの素早い速攻から始まった。キックとパンチのコンビネーションを、緩やかな舞のような動きで避けるスロウ・ダンサー。
スピード勝負のキング・カズマが珍しく攻めあぐんでいるようだ。
結局勝負はつかず、タイムアップ、引き分けとなった。
「何回か対戦したんだけど、負けないけど、勝てもしない……師匠に相談してみたんだ」
カズマの言う師匠とは、彼から見て祖父に当たる陣内万助、夏希から見ると大叔父に当たる人物だ。
佳主馬は万助から、格闘技の手ほどきを受け、それをOMCに応用して数々の記録を打ち立てていた。
「万助叔父さん、何て言ってた?」
ナツキが続きを促す。
「記録を見せたら、これは武術の動きじゃなくて、コンピュータに詳しい人に見てもらった方がいいんじゃないかって」
「それで、ケンジくんと連絡を取りたかったのね」
ナツキが頷く。
「なるほど。それじゃ、まず連絡先、渡しておくね」
ケンジは名刺型のアイコンをカズマに渡した。これで、お互いの連絡先が携帯の中に記録されるはず。
「それで、そのスロウ・ダンサーの勝ちパターンってどんなの?」
カズマは、いくつかの対戦動画を並べて表示させた。いずれも、スロウ・ダンサーと他のアバターが戦っている所だ。
「徹底的に回避して、最後にあの刀でグッサリ……カウンター攻撃で決めてる」
カズマの説明通り、どの動画もスロウ・ダンサーが優雅な動きで攻撃を回避し続け、焦れた相手が大技を出そうとするところでカウンター攻撃を決めている。
「ふーん、すごく目が良いんだろうね」
ケンジは顎に手を当てた。
「そうだ。僕はOMCにはあんまり詳しくないんだけど、カズマくんの強みって何?」
「スピード」
カズマの返事は短かった。
「ふーん。パンチやキックが早いんだ」
「スピードって言っても、物理的なスピードは、もっと早いアバターも居るよ」
「じゃあ、何のスピード?」
「うーん…」
カズマは考え込んだ。
「口で説明するの難しいから、実際に対戦してみない? 軽く」
ケンジは少し考えた。
「いいよ。じゃあ、チャットルームの設定変えるね」
OZの仮想空間は、アバター同士がぶつかっても、すれ違うだけでダメージは発生しない。俗に言う“当たり判定が無い”状態だ。
チャットルームを設置したケンジが管理者権限で、ルームにOMCルールを適用する。これで、格闘対戦ゲームが可能になった。
「お手柔らかに頼むよ」
ケンジが身構えた。
「先、攻撃して」
カズマはダラリと両手を垂らして、リラックスしている様子だ。
“Fight!”
OZのシステムが、戦闘開始の合図をした。
ケンジが殴りかかる。
その様子を見ながら、ナツキはちょっとだけ回想に浸っていた。
(人と人の縁って、不思議なもの…)

今年の夏休み。
夏希から見て、母方の実家に当たる陣内家で、曽祖母・栄の卒寿(90歳)の誕生日を祝うために、健二を伴って長野県の上田市へと行った。
最近、元気が無いという“大おばーちゃん”こと栄に、健二を引き合せ“私の彼”と紹介したのだ。
大好きな大おばーちゃんが、夏希に彼氏が居ないのを心配していると聞いて、高校の後輩である健二に頼みこんで一芝居うってもらったはずだった。
ラブマシーンによるOZの混乱。
大おばーちゃんの養子である侘助が10年ぶりに出奔した陣内本家に帰ってきたこと。侘助がラブマシーンを開発したこと。
大おばーちゃんの突然の死。
その間にOZの混乱が現実世界にも影響を及ぼしてきた。
陣内家の危機を、その場にいた親族二十数名全員の力で乗り切った。
そのきっかけになったのは、偽装彼氏の健二だった。
いつの間にか、夏希の中で健二が占める位置が大きくなり、そして、偽装彼氏の“偽装”が取れた。

ケンジとカズマの戦いは、見事なまでに一方的だった。
数学に関しては天才的な閃きを見せるケンジだが、反射神経はからっきし。
最初のパンチぐらいはカズマが受けるが、それから後は一方的に攻撃されっぱなしで3連敗だった。
「ケンジさん、判った? キング・カズマのスピード」
「体感しました……でも、カズマくんより早いアバターも居るんだろ? それにはどうやって勝ってるのかな?」
ケンジのアバターは鼻血を出していた。もちろん、単なるエフェクトで、操作している健二が痛みを感じているわけではない。
「だから、そういうスピードとは違うんだって……ええと」
カズマが説明する言葉を探している間に、ナツキが声を上げた。
「攻防一体ってことじゃない?」
「そうそう」
キング・カズマが頷く。
「剣道でもね、よく言うの。攻撃と防御は一体になるのが理想だって。攻めつつ、相手の攻めを防ぐような動きってことかな」
ケンジは少し考えた。
「ええと、相手が攻撃してきたら、防御すると同時にカウンターパンチを撃ち込むような感じ?」
「それだけじゃないけど、大まかに言ってそんな感じ」
ケンジは今の対戦を思い返した。確かに一度でも、カズマに攻撃されると、こちらから反撃するきっかけがつかめないままだった。
キング・カズマは今までの対戦記録から、該当する瞬間の動きを探し出して、空間に表示させる。
「なるほど……全てのアバターに対して、サーバーが提供するリソースは原則として同じだから……一つのアクションで多くの目的を……この場合、攻撃と防御を両立できれば、防御と攻撃を別のアクションで処理するより早くなるってことか」
数学の問題に置き換えられるようになると、俄然、ケンジの頭脳は回転速度を増す。OZのメンテナンスのアルバイトをしていることもあって、システム面にも詳しい。
「カズマくん、さっきの、スロウ・ダンサーの映像を見せてくれるかな」
「いいよ」
カズマが表示させた映像を、ケンジはスローモーションで再生した。
じっと凝視すること5分ほど。
「判った、ような気がする」
ケンジの声に、カズマが身を乗り出した。
「どんな仕掛けなの?」
「最小公倍数って、学校で習っただろ?」
「うん」
「それに近いかな……OZのフレームレートって、OMCでは秒間60フレームで処理している」
OMCを支えるサーバー群は、60分の1秒単位でアバターの行動を計算している。この最小単位の時間がフレームと呼ばれる。全てのアバターの行動に要する時間はフレームの整数倍に等しくなる。
「すごく話を単純化すると、カズマくんのアバターが3フレーム単位で攻撃してるとする」
「うん」
「スロウ・ダンサーは5フレームで、カズマくんに比べると、ゆっくり動いている。ゆっくり動いているけど、カズマくんの6回の攻撃をしのげば、3かける6で18フレーム目。スロウ・ダンサーの次の行動は5かける4で20フレーム目に処理が完了する。一方、カズマくんの次のアクションは、7回目イコール21フレーム目にならないと行動処理が完了しない」
キング・カズマは説明された数式を頭の中で咀嚼している。
ケンジが空間に、判りやすい模式図を描くと、ようやく呑み込めたようだ。
「タイミングをずらしまくって、隙を狙っている……それで、スロウ・ダンサーは最後にカウンター攻撃を決めるのか」
「逆に言うと、この戦い方だと、最後の最後でしかカウンター攻撃できない。だから、タイムアタックで最短時間を競うようなルールには対応できないんじゃないかな」
ケンジは鼻血のエフェクトを消して、キング・カズマの肩をポンと叩いた。
「具体的に、格闘でどんなアクションをしたらいいのか、僕には思いつかない……攻撃のリズムを頻繁に変化させることぐらいかな。でも、キング・カズマにならできると思うよ」
「ありがとうケンジさん」
カズマとケンジは拳をコツンと合わせた。
「次は勝つ!」

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新宿の喫茶店。
「佳主馬くん、本当に健二くんのこと気に入ってるのね」
夏希は、すっかり空になったチョコパフェの器にスプーンを差し込んだ。
「佳主馬くんのお母さんにも言われました。僕、一人っ子だから、ちょっとくすぐったい気もします。弟って、こんな感じなのかな」
ケンジがレシートを握り締めて立ち上がった。
「じゃあ、帰りましょうか、先輩」
「夏希でイイって言ったでしょ、健二くん」
健二の頬が赤くなる。
「えーと……な、夏希さん」
「うん、帰りましょ」
二人は喫茶店を出た。

2009.08.10 
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