2ntブログ
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最近、すっかり病院の中に詳しくなったと思う。
戦闘後のメディカルチェックやら、負傷者の見舞いで何度も訪れたせいだ。
アルトシェリルの病室を訪ねた。ベッドは空だった。
(たぶん、この時間なら…)
時計は16時を回っていた。
庭だろうと見当をつけた。

はたして、シェリルはお気に入りの木陰に設置してあるベンチに座っていた。
ひじかけにもたれかかってウトウトしているようだ。
アルトは心持、足音を忍ばせて歩くと、その隣に座った。
シェリルの横顔は穏やかで、頬も白い。
とは言え、こんな場所で警戒心の欠片もなくウトウトしているということは、体力が低下しているのかも知れない。
アルトシェリルの前髪をかきあげ、自分の額を合わせた。熱はないようだ。
「ん……」
瞼が開いた。間近でみる青い瞳は美しい。
「何すんのよっ」
最初の平手打ちはかわせなかったが、続くストレートパンチは何とか受け止めた。
「……ってアルト
「いきなり殴りかかるのは止めろ」
「び、びっくりするじゃない」
「お前こそ、こんな所で寝るぐらいなら、ベッドで寝ろよ」
「目を開けたら、アルトのどアップは心臓に悪いのよ」
シェリルの頬が赤らんだ。
「人の顔をホラー映画みたいに言うなよ。顔、赤いぞ。熱出たのか?」
「バカ」
SMSの宿舎で同じようなことをしたわ、と思いながらシェリルはそっぽを向いた。
「そういえば、この前の女の子どうした? 車イスに乗ってた」
シェリルはそっぽを向いたまま話した。
「サミーラ? 退院したわよ。義足をつけてたわ。足が再生できたら、再手術するって」
「そうか。ひとまず良かったな」
それから、二人は取り留めのない話をした。美星学園とクラスメイトたちのこと。SMSのこと。ランカのこと。
「そう、ランカちゃん、ギャラクシーのパイロットに護衛されているの」
グレイスを助けたパイロットと同一人物なのだろうか。シェリルは思いついた疑問と、寂しさを心の片隅にしまいこんだ。
「その護衛が、いけすかないサイボーグ野郎で……ブレラ・スターン少佐って言うんだが、知ってるか?」
感情むき出しの声に、シェリルはようやくアルトを振り向いた。
「いいえ、知らないわ」
「そうか。そうだよな。ギャラクシーだって一千万単位の人口がいるもんな」
アルトは時計を確かめた。
「そろそろ夕食の時間だろ。立てるか?」
「そうね……あっ」
ベンチから立ち上がろうとして、シェリルはふらついた。すかさずアルトが支える。
「座ってろ」
「そ、そうね」
シェリルはめまいに襲われて瞼を閉じた。
アルトはその様子を気づかわしげに見ながら、シェリルを安心させるように言った。
「長いことベンチに座ってたから、足が痺れたんだろ。待ってろ、車イスを借りてくる」
「うん」
アルトはナースステーションで車イスを借りてきた。
ベンチの所まで運んでくると、シェリルを抱き上げた。慣れてないので多少もたつきながらも、車イスに座らせる。
「ねえ、アルト」
シェリルは車イスのハンドルを握ったアルトを振り返った。
「なんだ?」
「少し、遠回りして。少しだけでいいから」
「ああ……売店でも寄っていくか? 暇つぶし用にクロスワードパズルの雑誌でも買うか」
「だめ、ああいうのは性に合わないの」
「そうか。実は俺も、あんなこちょこちょしたのは苦手だ」
アルトはできるだけ、ゆっくりと車イスを押していった。


★あとがき★
拍手も500を超えました。
それを記念して、ryoさんのリクエストをいただいて書いてみました。
私のお気に入り』の続きになります。
実はもうひとつ、別のパターンも思案中。近く、アップします。

★18話感想★
『ライオン』バージョンのオープニング、かっこいいですね。
このまま、終局まで疾走感を象徴しているようです。
以下、ネタバレ要素がありますので、未放映地域の方は要注意。





あざといっ。脚本・演出があざといっ。
『ライオン』の歌詞の「生き残りたい」のリフレインが切実に響きます。
ここまでシェリルがどん底にたたき落とされたからには、再び立ち上がった時の感動を期待してしまいます。
アルトの目の前で、矢三郎に連れて行かれるシェリルの演出もあざといっ。TMネットワークの『Self Control』を思い出してしまいました。
♪君を連れ去る車を見送って、追いかけることさえできなかったあの夜♪
予告編の和服姿シェリルが来週の楽しみです。

2008.08.08 


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