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「ねえ、ママ」
今年、プライマリースクールに入ったばかりの悟郎は、オフでくつろいでいるシェリルに尋ねた。
「なぁに?」
「パパと、どこで知り合ったの?」
「ね、もう一度言って」
「え?」
「もう一度、今の言葉を言って、お願い」
「パパと、どこで知り合ったの?」
「ついに、この日が来たのね!」
シェリルの反応に目を丸くする悟郎。
「子供から、ママとパパの出会いを聞かれるなんて。素敵だわ」
いそいそと、とっておきの映像ディスクを取り出す。
「悟郎、学校の宿題なの?」
シェリル似のストロベリーブロンドの男の子・悟郎。
「うん。メロディーも来るよ。同じ宿題だもん」
双子の片割れメロディーは、アルト似の黒髪が綺麗な女の子。
「お母さん…」
噂をすれば、メロディもやってきた。
「いいわ、二人の出会いを見せてあげるわね」
シェリルの仕事柄、業務用並のスペックを持ったAV機器がそろっている。メインスイッチを起動させると、素早い反応で初期画面が表示された。
ディスクをセットすると、高品位の立体映像を表示する。
中空にタイトルが浮き上がる。
“Girl meets Boy in Macross Frontier 2059”
最初のシーンは空撮で俯瞰したフロンティア船団旗艦アイランドワンの街並。
やがて、ドーム状の屋根に巨大な東洋風の竜のオブジェが取り付けられた建物をクローズアップする。
天空門ホールがコンサート会場の名前だった。
「ここね、私がフロンティアでライブを開いた会場なのよ」
「すげー」
拍手する悟郎。
「ホームビデオじゃなくて、映画みたい」
冷静に批評するメロディ。
「それはね、ライブビデオ用の素材を横流しして作ったからなのよ」
得意顔のシェリル
アルトはね、ライブのアトラクションでスタント飛行を披露するチームだったの」
画面は『射手座☆午後九時Don't be late』のイントロを映し出していた。
「お母さん、きれい」
「ママ、かっけー」
イントロに被せるように、虹色のスモークを引きながら上昇するEXギアのチーム。
「覚えておいてね、ピンク色のスモークがアルトよ」
音楽はサビのパートから、間奏部分に入った。
そこで、アルトのEXギアがシェリルへと突っ込んでいく。
「あっ」
「危ない!」
もつれ合うように舞台の下へと落ちていった二人。
しかし、間奏が終わる頃には急角度で上昇してきた。
カメラはアルトの腕に抱かれたシェリルの姿を捉えている。
「すごい演出」
メロディの言葉に、くすくす笑うシェリル。
「あれね、演出じゃないのよ。アルトが調子乗って、プログラムにないアクロバットしようとして、バランスを崩したの」
「パパはドキュンだったの?」
悟郎の言い回しに、目を瞬くシェリル。
「そんな言葉、どこで覚えたの?」
「スクールで」
「もう、ダメよ、そんな言葉使っちゃ」
「はぁい」
「まあ、アルトがお調子者なのは確かね。時々、ガツーンと言ってあげないと、すぐ調子に乗るんだから。でもね」
シェリルは映像に視線を戻した。アルトに抱かれながら、サビの部分を歌うシェリル。
「リカバリーする反応の早さは誉めてあげてもいいわね。さすが戦闘機パイロット」
「お母さんは、お父さんを初めて見て、どう思ったの?」
メロディの質問に、シェリルは回想した。
「そうねぇ、美人って思ったわ」
「ハンサムじゃなくて?」
「ええ。メロディの髪と同じ、真っ直ぐな黒髪……とっても綺麗で憧れたの」
「わたし、お母さんの髪、好きよ」
「ありがとう」
シェリルはメロディを抱きしめた。
「ボクも好きー」
悟郎も自分の髪と同じストロベリーブロンドの髪に顔を押し当てた。
「いいにおいがするー」

夜、子供たちはベッドに入った。
「ねぇ、メロディ、宿題どうする?」
悟郎が寝返りを打って、メロディの方を向いた。
「あの映像ディスク、学校に持って行ったらどうかしら。細かい所は、わたしたちで付け足して」
「そうだね。パパのことになるとママって、思いっきり力が入るよね」
「それをね、ノロケって言うのよ」
「メロディはムズかしい言葉知っているんだ」

2008.06.14 


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