2ntブログ
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携帯君が目を輝かせた。
着信相手を確かめずに電話に出る。
「もしもし……」
アルト君、こんばんは」
ランカは嬉しかった。他の人がいる前ではそっけないアルトだが、電話ではじっくり話を聞いてくれる。
ベッドの上に寝転んで、枕の位置を調節した。長電話の態勢を整える。
「一般教養の文学、ノート取ってるか?」
「うん、データ送ろうか?」
「助かる。この前の出撃と重なったからな。あの授業、単位取り易いから、確実にしたい」
「判った、後で送るね」
ランカの胸の奥がチクンと痛んだ。アルトやオズマ、ミシェル、ルカ……親しい人たちが死の危険にさらされている。
「お仕事の方はどう?」
「今は少し余裕が出てきたかな。相変わらずミハエルにしごかれてる」
「へぇ、意外」
「ヤツは学年トップだし、SMSでは上官だからな」
アルトの声は少し自嘲の響きが入っていた。
「お前の方はどうなんだ? あ、そうそう、この前、ショッピングモールで見たぞ。声かけようかと思ったけど、ちょっと急いでいたもんでな」
ランカの髪が逆立った。
(アレを見られてた!?)
「…ん、どうした?」
ランカの返事が遅れているのに、アルトが心配したようだ。
「あ、あはは……すごかったでしょ、かっこうが」
プリン型のかぶり物を思い出して、今度はランカの声が自嘲気味になった。
「ああ、すごかった。子供がじーっと見てたぞ」
ランカの髪がしょんぼりと垂れ下がる。
「あたしもお子様だから……見てくれるの子供ばっかりだよ」
「お前、子供をなめてるだろ?」
アルトの声の響きが変わった。
「別に、そんなわけじゃないけど……」
「子供の観客は怖いんだぞ。関心がないと、すぐに集中力が切れるから、どっかに行っちまう。あれだけ注意をひきつけられてたんなら、大したもんだと感心してたんだ」
「ええっ」
意外なところから来た褒め言葉に驚き、次の瞬間には頬が緩んできた。
「これでも芸歴はお前より長いからな、信用しろ」
「うん、信じる。信じるよ!」
「調子が出てきたな。その方がランカらしい」
「どういう意味、それ?」
「そのまんまさ。じゃあな、お休み」
「おやすみなさい」
通話が切れる。
ランカは、そっと携帯君にキスした。
今夜は良い夢が見れそうだ。
「明日から、またガンバるぞー!」


★あとがき★
8話から10話の手前、ぐらいの間の話。
ランカは10話になるまでアルトの芸歴は知らなかったから、本編とは矛盾していますが。

2008.05.26 


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